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業界で持っているのは、私くらいのものだった。 30万円以上した。
Sバル360が39万円だったから、いかに高価だったかがわかっていただけると思う。 時代は昭和30年代の前半である。
西暦でいえば1950年代、高度経済成長のビッグウェーブが始まっていたとはいえ、まだまだ日本は「発展途上国」か、せいぜいが「中進国」のひとつに過ぎず、欧米の製品に比べ西ドイツ(当時)のKaV0社製の歯科医療用ドリオットコントラとノーベアコントラ。 価格は国産の10倍はしたが、45年くらい前から、私はこういう信頼性の高い物を先生方にお勧めするようにしていた(現在でも使われている)。
こういう製品との出逢いも私の貴重な財産だが、これによって、先生方も私を信頼してくださることにつながっていった。 ちなみに、N田という国内メーカーがこの先端部分を採用することになったのは、それからずっと先のことである。
て、機械の精密さには不安があった頃だった。 いつまた機械の調子が悪くなるかわかったものではないから、当然、先生も私と親しくしておいて、万一に備えておこうと思われるはずである。
こうして先生方に信頼された私は医院に出入りすることが許され、材料についても任されるようになっていったというわけだった。 現在の営業スタッフと比較してみても、驚異的に高い確率といえるだろう)、独立して1年後には、私は約百件の医院を自分のお客様として確保していたのである。

といっても、この百件という数字が果たして多いのか少ないのか、この業界に詳しくない方にとってはわからないことかもしれないが、はっきり言って、多いほうである。 現在でも、東京都内で何10年も営業を続けている小さな歯科材料商店で、顧客の数が百件ほどというところは少なくない。
商売を始めて1年目の若造が百件も獲得したのだから、自分でもたいしたものだと思っていいのではないだろうか。 もちろん、その後も私はどんどん商圏を拡張していき、百件どころではない数の顧客を獲得することになった。
何度も繰り返すが、これも、ひとえに私に修理の技術があったからである。 その頃は、機器の修理ができる人間は、ほんとうに少なかった。
いったん故障してしまったら、そのメーカーの技術者でさえ、なかなか直せないのである。 それなのに、なぜ私には簡単に修理絶縁抵抗測定器。
現在は簡単に測定できる機械があるが、当時は手回しで500Wの電気を流して、漏電の有無を確かめたものである。

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